植木屋たちの挑戦
全国有数の植木産地である福岡県南地域は、いつ訪れても豊かな緑が迎えてくれます。その緑を育てているのが植木屋。
現在、樹芸連会員の一部の有志が、豊かな樹木の知識と経験、植木生産地の特色を生かして、自分たちが育てた樹木の枝葉から精油をとることに取り組んでいます。
有志たちは、すでに令和2年に一般社団法人緑の機能性研究所となり、自然を守る様々な会社や団体と協力関係を築きながら、挑戦を続けています。
当会もこの挑戦を見守っています。
精油とは
精油はエッセンシャルオイルとよばれ、精油(エッセンシャルオイル)は、植物の花、葉、果皮、果実、心材、根、樹脂、樹皮、種子などから抽出した天然の素材で、有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質です。
花や葉、果皮、根などを蒸したり、皮を搾ったりして抽出するのですが、大量の原料植物から、ほんの少ししか採れない貴重なものです。
よく「アロマオイル」というのを耳にしますが、「アロマ」は「芳香、香り、香気」のことです。
「オイル」は油のことですが、油といっても油脂ではありません。油脂は、脂肪酸とグリセリンの結合した物質で、植物油(ごま油やオリーブ油など)の多くは油脂です。しかし、精油を構成している成分は有機化合物(炭素を含む化合物)で、油脂とは別物です。
精油の香りと言う時、たくさんの種類があります。
樹木系、ハーブ系、柑橘系、フローラル系、オリエンタル系、樹脂系、スパイス系など、それぞれに特徴があります。
香りの好みは人それぞれですが、森とともに生きてきた日本人にとって、樹木の香りは本能が求める香りだと言えるのではないでしょうか。
植木屋がつくる樹木系精油
樹木系アロマの可能性
アロマがもたらす作用
植物から抽出される『精油(エッセンシャルオイル)』の香りを嗅ぐと、香り成分が鼻腔内の神経細胞を介して、脳の本能的な部分を司る大脳辺縁系や視床下部を刺激し、不安やイライラを抑え、自律神経のバランスを整える等の作用があることが多くの研究から分かっています。
その結果、現在アロマテラピーは医学の領域、精神衛生、環境衛生など多くの分野で使われています。
現在の傾向は、精油をベースにした医薬品の開発です。ドイツではすでに承認されていて、今後幅広く精油が使用される可能性が拡がりました。
樹木系アロマの特徴
樹木系の香りはモノテルペン炭化水素類のαピネンが多く含まれ、森林浴に近いリラックス作用とリフレッシュ作用を得ることが出来るとされています。
ある研究においては、 緑の香りに含まれる青葉アルコール、青葉アルデヒドの香りを嗅いでいると、疲労に伴い活動が下がってくる脳の前帯状皮質の活動が落ちにくくなることが実証されています。
また、園芸作業と疲労の関係を検証する実験において、園芸作業は神経症症状の改善や緊張、不安、抑うつ感、疲労感などを減少させる作用がありました。
疲労度の指標となる唾液中のコルチゾール濃度を低下させ、作業によるストレスを緩和し、中枢性疲労の回復効果が認められるわけです。
樹木などが放出する化学物質(α-ピネンやリモネンなどのフィトンチッド)が人の体や心に影響を与え、ストレスを緩和するのに役立つことは、すでに多くの研究があり、多くの人が知っているでしょう。
樹木系アロマは、
リラックス作用、抗菌・防カビ作用、防臭・消臭作用、防虫作用
などがあることがすでにわかっています。
また、空間アロマテラピーには森林浴のような樹木系アロマが最適です。
樹木系アロマオイル(精油)の使い方
自然の香りによる癒しをより多くの方に、身近に気軽に感じていただきたいと考えています。
- 虫除けアロマスプレー
- 消臭剤のかわりに
- 入浴時に小さな器に1~2滴落しリラックスバスタイム
- 石鹸・シャンプーなどに添加して使用
- 建築材料への添加(防カビ・防ダニ効果)
- 精油の副産物『蒸留水』を使って、化粧水・クレイパックなどの美容に
- ティッシュに1~2滴精油を落として枕元に置き、熟睡を促す
当会が指定管理者として管理・運営しております、福岡県緑化センターにて、毎年アロマ講座も行っています。
ご参加・お問合せは福岡県緑化センターのホームページからどうぞ。
「植木屋あろま」の強み
- 植木生産の技術はもちろん、原料となる植物(樹木)を正確に見分ける識別眼を併せ持ち、自家栽培した原料を使用することで衛生管理が確実であり、トレーサビリティが明確である
- 精油に優れた樹種が何かを見分ける技術と、豊富な研究材料を併せ持ち、精油を採るのに適した時期を特定し、成分の安定化を図ることができる
- 福岡県の推奨樹種のひとつである「銀梅花(ギンバイカ)」からも素晴らしい精油がとれることが分かっている
ギンバイカ(銀梅花)とは
マートル(ギンバイカ:銀梅花)は、福岡県の緑化木推奨樹種の一つであり、地中海地方の原産でフトモモ科に属します。
5月末から6月にかけ白いおしべが目立つ可憐な花(梅に似ているので銀梅花)を咲かせます。
この木の特徴は花が可憐で美しく、枝葉や実に芳香がありハーブとして利用され、生垣にも適しています。
土壌や気候によって栽培が難しい面があり、福岡県と福岡県の緑を考える会が共同研究し栽培技術を確立し、久留米産ギンバイカとして産出できるようになりました。
ヨーロッパでは祝いの木とされ、英国のウイリアム王子とキャサリン妃の結婚式のブーケにも5種の花の一つに使われました。
活動の様子
マートル(ギンバイカ)ほ場(茶畑風に列状に植え、伸びた枝:新芽を刈り込んで原料にする)
マートル(ギンバイカ)生垣(刈込みに強いので垣根にも向く)
マートル蒸留見学会
RKB今日感テレビ取材
マートル(ギンバイカ)を使ったブーケ
(マートルのロイヤルウエディングブーケはいかがですか!写真はトルコキキョウとかすみ草をあわせています)
沿革
この取り組みを始めた植木屋さんたちの歩みを紹介します。
歴年 | 内容 |
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平成22年 | 福岡県の緑を考える会会長(当時)の福島明裕氏が樹木の機能性について調べる中で樹木の精油に着目 |
平成23年 | 考える会と福岡県森林林業技術センター(現資源活用研究センター)でギンバイカの栽培技術の共同研究を始める |
平成24年 | 小型の蒸留器で試験蒸留を始める。ギンバイカ、モミ、トウヒ、クロモジ、シロモジ、クロマツ、カナクギノキ等から精油を抽出 |
平成25年 | 考える会の講演会に九州大学清水邦義氏を迎え、会員全体で樹木の新たな活用法について学ぶ |
平成28年 | 考える会の講演会にアロマセラピスト倉地摩紀子氏を迎え、会員全体で樹木系アロマの可能性を学び、本格的に蒸留実験を開始する |
平成29年 | 考える会の有志で「アロマ事業部会」を立ち上げる |
平成29年 | マートルのアロマオイルを「植木屋あろま」として限定100本を、7月7日に共同国際会議2017in福岡の会場内にて、特別価格で販売 |
平成30年 | 「緑の機能性研究会」に改組、改称 マートル、ウラジロモミ、ケクロモジの精油を販売 |
平成30年秋 | クラウドファンディングを立ち上げ。 植木屋あろまを多くの人に知ってもらうため、平成30年に蒸留したマートル、ウラジロモミ、ケクロモジの精油を特別価格にてリターンに設定。 筑後川ブランド大会に参加。 大会は、筑後川と矢部川流域の魅力的な商品をPRし、市民参加(投票)によってブランド認定をおこなうもの 筑後川ブランド大会HP 久留米まちゼミに参加。 久留米まちゼミHP |
令和元年6月 | 久留米まちゼミに参加。 久留米まちゼミHP KUHONちくご川まるごと市企画まちゼミに参加 老舗石鹸メーカーさんと安心安全な入浴剤開発 |
令和2年 | 一般社団法人緑の機能性研究所として独立 一般社団法人緑の機能性研究所HP |